日本支店がある非居住者との間の取引の消費税の課税関係(消費税法基本通達7-2-17の内容)

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日本に支店等がある非居住者に対する役務の提供の消費税の課税関係

国際取引における消費税の取り扱いで、ポイントとなる取引の一つが、「日本に支店等がある非居住者に対する役務提供」の消費税の課税関係があります。一見、輸出免税の対象となりそうですが、消費税法基本通達7-2-17により、当該非居住者に日本国内に支店等がある場合には、一定の場合を除き、その支店等を通じた取引とみなされて、輸出免税の対象とはならず、国内取引として課税対象となります。

消費税法における輸出免税の基本原則

消費税は国内での消費に対して課税される税金です。そのため、日本との取引でも、日本国外で消費される財貨やサービスについては、消費地課税の原則に基づき消費税が免除されます。これが輸出免税制度です。

消費税法第7条第1項は、輸出取引などの一定の取引について免税を規定しており、国際的な二重課税を防止し、日本企業の国際競争力を維持する重要な役割を果たしています。特に、非居住者に対する役務提供も、一定の条件を満たせば輸出免税の対象となります。

しかし、この「一定の条件」こそが今回のテーマの核心部分となります。単純に相手が非居住者であれば免税になるわけではなく、実際のサービス消費地や取引の実態を慎重に判断する必要があります。

非居住者の定義と輸出免税の適用要件

消費税法における非居住者とは、日本国内に住所や事務所等を持たない個人または法人を指します。外国為替及び外国貿易法(外為法)上の非居住者をいいます。

非居住者に対する役務提供が輸出免税の対象となるのは、そのサービスが最終的に国外で享受され、日本国内の消費活動に直接影響を与えないと考えられるためです。例えば、海外企業に対するコンサルティングサービスや技術指導などが典型例です。

ただし、非居住者への役務提供であっても、国内で直接便益を享受するもの(国内での飲食・宿泊サービスや国内不動産の管理など)は免税の対象外となります。この点は実務上よく間違えやすいポイントです。

消費税法基本通達7-2-17の重要な規定内容

ここからが本記事の最重要ポイントです。消費税法基本通達7-2-17は、非居住者が日本国内に支店等を有している場合の特別な取り扱いを定めています。

具体的には、「非居住者に対する役務の提供であっても、その非居住者が国内に支店等を有している場合には、当該役務の提供はその支店等を通じて行われたものとみなす」と規定されています。つまり、形式的に契約相手が海外の本店であっても、一定の場合を除き、実質的には日本の支店を通じたサービス提供と判断されるのです。

この「みなし規定」により、たとえ契約書上の相手方が海外の本店であっても、サービスが日本の支店を通じて行われているとみなされ、輸出免税の対象外となります。これは経済実態を重視した判断基準といえます。

取引パターン契約相手消費税の取り扱い根拠法令
日本に支店なしの外国企業への役務提供海外本店原則、輸出免税消費税法施行令第6条
日本に支店ありの外国企業への役務提供海外本店原則、国内取引(課税)消費税法基本通達7-2-17
日本支店との直接契約日本支店国内取引(課税)消費税法基本原則

消費税法基本通達7-2-17国内に支店等を有する非居住者に対する役務の提供(一部抜粋、編集あり)

事業者が非居住者に対して役務の提供を行った場合に、当該非居住者が支店又は出張所等を国内に有するときは、当該役務の提供は当該支店又は出張所等を経由して役務の提供を行ったものとして、消費税法施行令第17条第2項第7号《非居住者に対する役務の提供》の規定の適用はないものとして取り扱う。
 ただし、国内に支店又は出張所等を有する非居住者に対する役務の提供であっても、次の要件の全てを満たす場合には、消費税法施行令第17条第2項第7号《非居住者に対する役務の提供》に規定する役務の提供に該当するものとして取り扱って差し支えない。 

(1) 役務の提供が非居住者の国外の本店等との直接取引であり、当該非居住者の国内の支店又は出張所等はこの役務の提供に直接的にも間接的にもかかわっていないこと。

(2) 役務の提供を受ける非居住者の国内の支店又は出張所等の業務は、当該役務の提供に係る業務と同種、あるいは関連する業務でないこと。

実務でよくある判定ケースと対処法

実際の税務処理では、以下のようなケースでの判定が重要になります。まず、米国法人が東京に日本支店を設けており、その米国法人本店と契約してコンサルティングサービスを提供する場合を考えてみましょう。

この場合、契約書上の相手は「米国法人本店」ですが、実際のサービス内容が日本支店の業務改善に関するものであれば、消費税法基本通達7-2-17により「支店を通じて行われたもの」とみなされ、国内取引として消費税が課税されます。

判定のポイントは、サービスの実質的な受益者と消費地がどこにあるかという点です。日本支店の業務に関連するサービスであれば、形式的な契約関係にかかわらず、実質的に日本国内での消費と判断されるのです。

国内取引と輸出取引の明確な区別基準

消費税法において、取引が国内取引か輸出取引かの区別は、消費税の課税・非課税を決定する上で極めて重要です。この区別は、取引の相手方、役務の提供場所、消費地などの要素を総合的に考慮して判断されます。

支店等を有する非居住者との取引については、形式的な契約関係ではなく、実質的な取引の性質が重視されます。つまり、取引が実質的に国内での経済活動に関連するかどうかが判断基準となります。

この基準により、同じ非居住者への役務提供でも、支店の有無によって税務処理が大きく変わることになります。税務調査においても、この実質判定は重要なチェックポイントとなりますので、適切な証拠書類の保存が必要です。

よくある質問と実務上の注意点

Q: 日本支店への役務提供でも、契約が本店との間で締結されていれば輸出免税になりませんか?

A: いいえ、原則なりません。消費税法基本通達7-2-17により、実質的にサービスの受益者が日本支店とみなされ、契約の形式にかかわらず、原則として、国内取引として扱われます(消費税の課税取引となります)。外国にある本店と直接契約をしており、かつ、その業務内容が、国内にある支店が、その業務内容と関連していない場合などに限り、輸出免税の適用があります。

Q: 支店を持つ外国企業でも、本店業務のみに関するサービスなら輸出免税の可能性はありますか?

A: 実務上は、支店を通じて行われたとみなされることが多いため、原則として輸出免税が適用可能性は低いと思います。その証明が非常に困難です。サービスが純粋に海外本店の業務のみに関連し、日本支店とは無関係であることを明確に立証する必要があります。

実務上の注意点として、契約書にはサービス内容と受益者を明確に記載し、請求書や業務報告書なども整合性を保つことが重要です。

まとめ

消費税法基本通達7-2-17は、国際取引における消費税の適正課税を確保するための重要な通達です。日本に支店等を持つ非居住者への役務提供は、原則として、国内支店を通じた役務提供とみなされるため、輸出免税の規定は適用されず、消費税の課税取引(10%)となる場合が多いと考えられます。

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この記事を書いた人

税理士 加来耕司です。

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