日本の消費税の基本的な計算方法

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消費税の課税の対象

消費税の課税対象は、次の3つの取引に限られます。

  1. 国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡及び貸付並びに役務の提供
  2. 特定仕入れ
  3. 保税地域から引き取られる外国貨物の引取り(輸入取引

なお、国外において行われる取引および資産の譲渡等に該当しない取引は、課税の対象とはなりません。

非課税取引

消費税が課されない「非課税取引」は、法律で特に定められており、社会的・公共的な要素が強い取引が多く含まれます。非課税取引に該当するものには、次のようなものがあります。

1 土地の譲渡、貸付け(一時的なものを除く。)など
2 有価証券、支払手段の譲渡など
3 利子、保証料、保険料など
4 特定の場所で行う郵便切手、印紙などの譲渡
5 商品券、プリペイドカードなどの譲渡
6 住民票、戸籍抄本等の行政手数料など
7 外国為替など
8 社会保険医療など
9 介護保険サービス・社会福祉事業など
10 お産費用など
11 埋葬料・火葬料
12 一定の身体障害者用物品の譲渡・貸付けなど
13 一定の学校の授業料、入学金、入学検定料、施設設備費など
14 教科用図書の譲渡
15 住宅の貸付け(一時的なものを除く。)

国内取引の納税義務者

1.   事業者

日本国内で事業を行う法人および個人事業者が対象となります。事業者は、売上に対して消費税を顧客から預かり、税務署に納税申告する義務を負います。

2.課税売上高1,000万円超の事業者

その課税期間(個人事業者は暦年、法人は事業年度)の基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下の事業者は「免税事業者」として、消費税の納税義務が免除されます。ただし、消費税の課税を選択することも可能です。基準期間における課税売上高が1000万円を超える事業者は、消費税の納税義務者(課税事業者)となります。基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合は、その課税期間においては課税事業者となります。

 特定期間とは、個人事業者の場合はその年の前年の1月1日から6月30日までの期間、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間のことをいいます。
 なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。

3.   免税事業者

特定期間の条件に該当する場合を除き、その課税期間(個人事業者は暦年、法人は事業年度)の基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下の事業者は「免税事業者」として、消費税の納税義務が免除されます。ただし、消費税の課税を選択することも可能です。

4.   基準期間とは

個人事業者の基準期間

基準期間:個人事業者の基準期間は、課税対象年度の前々年に該当します。            例:2024年分の消費税の納税義務を判定する際は、2022年の売上高が基準となります。

基準期間の役割:原則として、前々年の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかをもとに、2024年に消費税を納税する必要があるかが判断されます。(厳密には、特定期間の売上高等での判定もあります。)

法人の基準期間

基準期間:法人の基準期間は、課税年度の前々事業年度が該当します。

基準期間の役割:原則として、基準期間における売上高を元に、法人が消費税の納税義務を負うかどうかが判定されます。(正確には、特定期間の売上高等での判定もあります。)

消費税の計算方法概要

1.消費税の計算方法 原則課税

消費税の原則課税方式は、売上にかかる消費税額から仕入や経費にかかる消費税額を控除して計算する方法です。仕入や経費にかかる消費税額を控除することを仕入税額控除といいます。仕入税額控除を行うには、一定の条件があります。

消費税は、売上に対する消費税(売上税額)と仕入れにかかる消費税(仕入税額)という2つの要素から成り立っています。最終的に事業者は、売上で預かった消費税から仕入れにかかる消費税を控除し、その差額を国に納付します。

STEP
売上税額の計算

事業者が顧客に対して商品やサービスを販売した際に受け取る消費税を「売上税額」と呼びます。これは、売上の金額に消費税率(2024年時点で10%)を乗じて計算します。
例として、税抜き価格で1,000万円の商品を販売した場合:
消費税率が10%の場合、この場合の売上税額は100万円となります。この100万円は、事業者が顧客から受け取って預かっている消費税です。

STEP
仕入税額の計算

次に、事業者が商品やサービスを仕入れた際に支払った消費税が「仕入税額」となります。原則課税では、この仕入れにかかった消費税を納税額から控除することができます。
たとえば、事業者が商品を仕入れる際に500万円の税抜価格で購入し、消費税(10%)を支払った場合:
この50万円は事業者が支払った消費税です。この額は後に納付する消費税から差し引くことができます。

STEP
納付税額の計算

納付すべき消費税額は、売上にかかる消費税額(売上税額)から仕入れにかかる消費税額(仕入税額)を差し引いた差額です。
具体例として、上記の売上税額100万円と仕入税額50万円の場合の納付税額を計算すると:100万円 - 50万円 ₌ 50万円

この50万円が事業者が国に納付するべき消費税額となります。

控除の条件:帳簿と請求書の保存

売上税額から仕入税額を控除するためには、一定の条件を満たす必要があります。事業者は以下の2つを適切に保存する必要があります。

•   帳簿:取引内容、金額、日付が記載された帳簿
•   適格請求書(インボイス):取引先から受け取る適格請求書等の保存が必須です。

このインボイス制度は、仕入れ税額控除を認めるための重要な制度であり、特に2023年10月から施行された適格請求書等保存方式(インボイス制度)に基づきます。

2.消費税の計算方法 簡易課税

簡易課税制度は、中小企業などに適用される制度で、原則課税方式に比べて手続きが簡単になります。課税売上が5,000万円以下の事業者がこの方式を選択できます。簡易課税では、実際の仕入税額をもとに計算するのではなく、業種ごとの「みなし仕入率」を使用して消費税を計算します。

     みなし仕入率は業種ごとに異なり、以下のように定められています

  • 第1種事業(卸売業):90%
  • 第2種事業(小売業):80%
  • 第3種事業(製造業・建設業など):70%
  • 第4種事業(飲食業など):60%
  • 第5種事業(サービス業など):50%
  • 第6種事業(不動産業):40%

計算方式:仕入控除税額 = 売上に係る消費税額 × みなし仕入率

令和6年10月1日以後に開始する課税期間から、その課税期間の初日において恒久的施設(PE:Permanent Establishment)を有しない国外事業者は、簡易課税制度の適用を受けられません。

3.簡易課税の選択できる基準

簡易課税を選択できるかどうかは、まず次の基準に当てはまる必要があります。

基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者のみが、簡易課税制度を選択できます。基準期間とは、法人の場合は前々事業年度、個人事業者の場合は前々年のことです。上記、国内取引の納税義務者4で説明しています。

例)2024年度に簡易課税を選択したい場合、基準期間は2022年度(法人の場合)または2022年(個人事業者の場合)の課税売上高が5,000万円以下である必要があります。

基準期間の売上高が5,000万円を超えている場合、簡易課税は選択できず、原則課税方式が強制されます。

4.原則課税とメリットとデメリット

メリット

実際に支払った仕入税額が全額控除できるため、仕入や給与以外の経費が多い事業者には有利です。

仕入れコストが高い業種では、控除額が大きくなるため、納税額を減らすことができる可能性があります。建物など高額の固定資産の購入などの消費税の支払いが発生する場合や輸出売上が多い場合などに、消費税の還付を受けられる場合があります。

デメリット

記帳が複雑で、インボイスなどの請求書や領収書をすべて保存し、正確に管理する必要があるため、事務作業の負担が大きくなります。

5.簡易課税のメリットとデメリット

メリット

記帳やインボイスの保存が簡略化され、仕入税額の計算が不要なため、事務作業の負担が軽減されます。

業種ごとの「みなし仕入率」で仕入税額を計算するため、仕入が少ない場合でもある程度控除が認められます。特に、仕入れが少ない業種にとっては有利です。

デメリット

実際にかかった仕入税額が少ないと、納税額が原則課税方式よりも多くなる可能性がありますまた、固定資産の購入など、支払った消費税額が多い場合でも、その計算式上、消費税は必ず納付になり、消費税の還付は、受けられません。

仕入税額の控除は「みなし仕入率」に基づくため、実際の仕入れが多い事業者には不利です。

6.選択の流れ

簡易課税を選択する場合は、事前に税務署へ「簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。この届出は、適用を希望する事業年度の開始前までに提出しなければなりません。

一度簡易課税を選択すると、2年間は変更できないため、よく検討してから選択する必要があります。

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この記事を書いた人

税理士 加来耕司です。

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